EXHIBITIONS

近藤恵介・古川日出男「、譚」

  • Information
  • Works

画家・近藤恵介と小説家・古川日出男による2人展「、譚」(読み:てんたん)を開催します。これまで様々な形で活動を共にしてきた両者ですが、展覧会の開催はおよそ2年半ぶり、今回で4度目となります。

過去に2人が行ってきた制作の多くでは、古川が文字の、近藤が絵画の要素をそれぞれ担当。時に即興的なセッションを交えながら、両者の間を紙が往復し、作品が生まれてきました。本展はそうして積み重ねられてきた制作や展覧会の延長線上にありつつ、より多元的に発展していきます。

まずギャラリーの一部には、作家自らが歴代作品群の中から何点かを選び、回顧展的な構成を施します。これまで近藤と古川は各展覧会ごとにまとまった数の作品を制作していますが、それらは各シリーズごとに固有の、濃厚なコンテクストを纏ってきました。今回の展覧会では歴代作品を元来の文脈から切り離し併置することによって、それらが持つ単体の絵画としての強度を浮かび上がらせ、新たな側面をみせることを目指します。加えて本展のた めに作られる新作では、近藤が自身の制作の関心事とする屏風や襖といった建具や、江戸初期によく描かれたとされる、室内空間を扱った「誰が袖図」という画題を参照。絵画でありながら家具としての機能をも持つこの新作は、展示空間を複数に区分けすると同時に、絵の内と外を結ぶようなインスタレーションを構成します。展覧会2日目には近藤と古川による公開制作も行われますが、作家の部屋=アトリエでありながら過去と現在を展覧する場でもあり、また会場全体を1枚の絵画とするかのような多義的な空間が発生するでしょう。

一方、古川は3月6日発売の文芸誌『すばる』(集英社)で新作中編小説「焚書都市譚」を発表予定。この小説は2016年の展覧会「ダンダンダン。タンタンタン。」において発表された同名の絵画4点に端を発するものです。古川はこの小説をベースに、“画廊劇” と称する演劇 / パフォーマンスを演出し、会期中に2日間にわたり上演します。公演には古川と近藤に加え、北村恵(俳優 / from ワワフラミンゴ)と河合宏樹(映像作家)の両氏、およびギャラリースタッフも参加。地下1階から地上2階までの複数空間をフルに使ったダイナミックなパフォーマンスが展開される予定です。公開制作、パフォーマンス、そして多層的な展示空間が重なり合うことで、およそ1ヶ月の会期中に展覧会は刻々と変化を遂げていきます。流動するギャラリーの様相は、展覧会タイトル「、譚」の「、」、すなわち継続や変転を象徴する読点が示すものの1つです。小説家デビュー20周年でもあった今年度、古川は執筆に留まらない様々な活動を精力的に重ねてきましたが、今回の展覧会とパフォーマンスは、その記念イヤーを締めくくるに相応しいスリリングなものとなりそうです。

2011年の「絵東方恐怖譚(え・とうほうきょうふたん)」、2012年の「覆東方恐怖譚(ふく・とうほうきょうふたん)」、そして2016年の「ダンダンダン。タンタンタン。」に続く今回の「、譚」。これまでで最も予測不可能な変容を遂げていくであろう前代未聞の展覧会を、ぜひ目撃してください。

古川さんとの4度目の展覧会は——

愚直な合作を2011年に始めてから、画面を挟んでの対話を繰り返してきた。少しずつ方法も見出してきたし、お互いの共通言語もできたように思う。そのひとつの集大成が2016年にLOKOギャラリーで開催した展覧会「ダンダンダン。タンタンタン。」だろう。ダンダンダン!と絵と文字を積み上げた。絵が屋根、壁、床で、それを文字が柱となって支えることで、あの大きな建物のような作品は建った。お互いの絵と小説を背景に据えながら、これまでの方法論を最大化して基礎とした作品であり、あの真新しい天井高のあるギャラリー空間を覆った。日光がよく入る展示室にタンタンタンと足音が響いた。

今度はどうだろう。振り返ると、これまでにつくってきた沢山の作品がある。「振り返る」というと人生がリニアであるように思えるが、まさにそのような作品をつくってきたともいえる。というのも、最初に古川さんと2人で共作をしたのが雑誌の誌面上で、それはページを繰りながらみる/読むことが前提としてあったし、そのことを強く意識して天平時代の絵巻物《絵因果経》の形式を引用した。ただ、簡単に一直線に読めないように、視線がつまずくような段差の多いデコボコした誌面ではあったが——。

そのことが出発点としてあるので、それからこっち、知らぬうちに直線的に歩んできたのではないか。そういえば、冒頭に書いた「ダンダンダン。タンタンタン。」展のときだって、直線的に作品を積み上げた。部分であるそれぞれの絵も直線が多用されていることに今になって気がつく。線を引くような数年間。

去年の12月1日に古川さんの舞台上でのパフォーマンスをみた。前半の自著の朗読にぼくは相当に揺れた、いや、文字が揺れていた。
朗読は、ガラスの大皿で本を下敷きにした状態で始まった。その後、皿に水が注がれた。水とガラスを通して文字は読まれ、声となって耳に届いた。安定しない本に乗る皿は揺れ、それに連動して水面は波打ち、文字は揺れた。声は——当然揺れたし、読み間違うので途切れた。自分の書いた文字列を湾曲させ、揺らし、それを読み、声に出すことで、空間を揺るがした。繰り返しになるが、ぼくも揺れて、ひっくり返った——比喩でなく。しばらく後に、万年筆のインクが数滴垂らされて、水と空間がきれいな淡いブルーに染まる。

——そういうものになる。

2019.1.23 近藤恵介

展覧会の予告映像がYouTubeにて公開されています。
映像の制作は画廊劇の出演者でもある河合宏樹さんです。
(2019.2.23)


画廊劇「焚書都市譚」 公演情報

▼3月30日(土)画廊劇「焚書都市譚(三月版)」Thank You Sold Out !
16:40 ギャラリー1Fにて受付開始
16:50 開場
17:00 開演

▼4月21日(日)画廊劇「焚書都市譚(四月版)」Thank You Sold Out !
17:10 ギャラリー1Fにて受付開始
17:20 開場
17:30 開演

*12名さま限定で追加予約を受付中です。
ご好評につきキャンセル待ちのお問い合わせを多数いただいたことから、緊急増席が決定いたしました。(4/4更新)

追加分も含め、予約完売いたしました。
キャンセル待ち予約を承っております。(4/9更新)

[出演]
古川日出男(小説家)、近藤恵介(画家)、北村恵(俳優 / from ワワフラミンゴ)、 河合宏樹(映像作家)、宮下和秀(ギャラリスト / from LOKO GALLERY, MUG)、 田中耕太郎(ギャラリスト, 音楽担当 / from LOKO GALLERY, しゃしくえ)

各回50名限定 入場料:2600円(1ドリンク付き)

*ドリンクは、ギャラリー併設のカフェ・私立珈琲小学校による「焚書都市譚」特別限定ブレンドコーヒー2種(ブラック / ラテ)、もしくは数種類のソフトドリンクの中からお選びいただけます。

ご予約・お問い合わせは メール (tentan [at] lokogallery.com)または 電話(03-6455-1376)にて受付中です。
予約希望の方は、お名前・人数・ご連絡先をお知らせください。

▼4月21日(日)画廊劇「焚書都市譚(四月β版)」
13:40 ギャラリー1Fにて受付開始
13:50 開場
14:00 開演

50名限定 入場料:2000円(1ドリンク付き)


好評につき、最終日のゲネプロ(リハーサル)を特別料金にて公開いたします。
このβ版は、本番公演とは一部異なるヴァージョンの演出で上演されます。
既に本番公演をご予約いただいているお客様につきましては、夜の公演(四月版)とこの公開リハーサルの両方を予約することも可能です。
夜から昼への予約の振替えも受け付けております。

なお、四月β版の開催決定に際し、古川日出男氏からは以下のメッセージが届いております。
「諸般の都合上、本番とはエンディングの演出が異なりますが、別展開を用意いたします。」