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幸田千依​​「ひとつの窓と11枚の絵」

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◯オープニングレセプション:27日(金)17:00-19:00

LOKO GALLERYでは5月27日より6月26日まで、画家の幸田千依​​による展覧会を開催いたします。本展では2018年に開催した個展から、出産を経て、コロナ禍での子育てという大きな環境の変化の中で描いた作品を展示いたします。

2018年に開催した展覧会では、ビルの谷間にうごめく人間のエネルギーや、夜景が映し出す生活の営みなど、渋谷駅近くを歩き回って着想を得たモチーフが見られました。しかし今回は、自宅の部屋から見える家族の洗濯物が風にそよいでいる姿を観察し、10枚のドローイングを描き、11枚目の本作を完成させています。

どのような環境下にあっても、その時々の暮らしの中に現れる景色を見つめることで制作を続け、そこで起こる葛藤や試行錯誤を繰り返して促される内省の旅のプロセスを全て公開し、景色の中にある本質を見つけ出す展覧会となります。今、このときの輝きを放つ幸田の新作を是非ご高覧ください。

​​「ひとつの窓と11枚の絵」幸田千依​​
もうずっと 絵を描くことと その時在る場所の必然が一致してきている
初めての土地を訪れる時 私の今描きたいものはそこにあった
様々な縁で これまで沢山の場所に運んでもらうことができ その都度
絵を描くことと生きていくことがひとつの歯車になって次へと進んできた

2019年に人生初の出産をして 私の当面の居場所が家になった
心身はひとつだなあと痛感させられる日々の中 今思うと 赤ちゃんはいつだって健やかで
濁りなく育ち 私はいつの間にか身についた自分の体や心のクセの多さに四苦八苦していた

絵を描くことなどしばらく頭になかったが 毎日部屋のソファに座り 赤ちゃんを抱きながら
ベランダに干してある洗濯物を見るともなく眺めていた
以前より増えた洗濯物が 赤ちゃんのための五月の鯉のぼりと共にはためいている
それは一瞬でもあり 毎日の連続の景色でもあり
時が前に進んでいることの証でもあった

心身の変調でぼーっとした眼で毎日窓の外をぼんやり見ていると
今までのように景色に出会い 絵を描いてきた時とは全然違う感覚で
目の前にあるものを見つめているということがわかった

一瞬ごと違う 洗濯物のはためきの中に 自分の体験や経験とは違う 不動の
「いつもあるもの」をじんわりと感じ取ることができた
そしてその思いが「五月の窓辺」という一枚の絵となった

その絵を描いてから2年ほど時が経って 私は今回 またベランダの洗濯物の絵を描くことにした

この2年のあいだ 外に出て絵を描くこともあったが 子供との暮らしと並行する制作や
今の時代の状況下で元々の出不精が加速して あいかわらず私の目の前の景色は
ひとつの窓とその奥の洗濯物だった

全てのものは動いていて 変化していないものはひとつもなく
洗濯物の中に新しい子供服や布マスクなどが加わっているけれど
五月にはまた鯉のぼりを出し はためく洗濯物の中の「いつもあるもの」は健在だ

これはまるで 万華鏡を覗いて見たときのように
自分が何を見ているのか判断できないままに見つめ続けてしまう景色なんだと感じた

そしてこの絵を描きながら 私はひとりぼっちではないというふうに思った
昔の自分と 今の自分と これからの自分が横に並んでそれぞれ
同じ景色を見て語らっている
目の前のことが全てのことにもれなく続いてきたのだなと思う

完成した絵が このような実感を元にして
昔の 今の これからの人たちに向けて 伝わっていくよう
色彩からの伝言を 私なりに受け取って描いていこうと思っている

ARTIST PROFILE: 幸田千依