EXHIBITIONS

開催終了|近藤恵介「絵画の手と手」

  • Information
  • Works

近藤恵介の個展「絵画の手と手」を開催します。
LOKO GALLERYでは近藤恵介と小説家・古川日出男との協働による2人展を2016年「ダンダンダン。タンタンタン。」、2019年「、譚」と開催しています。
この過去2回の展示では、近藤が制作の過程にある作品を相手に委ねることを繰り返すことで描いた線に時間が介在し作品が生まれ続けました。
今回は、この身体的、物理的やり取りの協働から折り返すかのように所在しない他者との理念的な協働によって、時間性を超克した線が描かれ作品が立ち現れる展覧会になることでしょう。

近藤は、自身が2021年にまとめた論文「卓上の絵画、線の振幅」の冒頭部分で次のように論じています。

小林古径、安田靫彦、前田青邨、の制作プロセスを中心に読み解き、画家たちの協働から生じた「決定した一本」の線のあり方を考察し、今日の絵画の別の可能性を示す。

また、論文おわりには「小論全体が注釈となる作品制作へと向かう。」とあります。

本展覧会「絵画の手と手」は個展でありながら鑑賞者を巻き込んだ鑑賞者との協働もありうる展覧会になるのではないかと密かに期待しています。皆さまどうぞ巧妙に仕組まれた近藤の手のうちにまんまと乗せられにご来場ください。

◯ オープニングレセプション|10月28日(金) 17:30-19:30[予約不要]

◯ 近藤恵介 勉強会「絵画に手をのばす、遅く話す」|11月3日(木) 祝日 開催は終了いたしました。

◯ 近藤恵介・古川日出男 読書会「古川日出男、長篇詩『天音』譚」|11月26日(土)開催

近藤恵介と度々協働で制作を行ってきた小説家古川日出男の長編詩『天音』がこの展覧会と呼応するかのように11月21日から出版されることになりました。『天音』のカバー装画は近藤(絵)+古川(写真)の共作です。
つきましては下記要領で近藤と古川による読書会を開催いたします。

日時:2022年11月26日(土) 午後5時〜7時
場所:〒150-0032 東京都渋谷区鶯谷町12-6 LOKOビル   LOKO GALLERY / zenta coffee B1F&1F
参加費:2000円(飲み物、お菓子付き)
予約制:下記サイトからの予約、限定20名様
予約サイト:https://forms.gle/sGkd7ymeraJRYQCr6

その他|11月21日から発売予定の古川日出男 長編詩「天音」のサイン本をLOKO GALLERYにおいて特別価格1,800円(税込)で販売しております。
次のサイトからは市販価格で購入できます。 https://inscript.co.jp/b1/002-3

***『天音』をお読みになってからお越しいただけると、より楽しめるイベントです。***

 

出版:INSCRIPT   https://inscript.co.jp/
古川日出男 公式WEBサイト『古川日出男のむかしとミライ』 https://furukawahideo.com/

 


 

作家ステートメント

古径の遅筆
筆記具をもって紙に線を引く。線は手の動く方向に延びてゆき、運動の軌跡として紙の上に残されるので、一般的にリニアな時間を想像させる。
明治~昭和の日本画家・小林古径は遅筆で知られ、多くのエピソードが残る。古径とも親交のあった哲学者の谷川徹三は「小林古徑という四字を書くのに、五分はたっぷりかかったろう。或いは十分位かかったかも知れない」と懐古している。実際に試してみればわかることだが、それだけの時間をかけて運筆するのはとても難しいし、かなりの辛抱強さがいる。
古径の画室に招かれ、制作の様子を目にした弟子の村田泥牛は、一枚の木の葉に緑青を塗るときのあまりの運筆の遅さから、息苦しさにたまらなくなり、部屋を飛び出したという。
古径はこの時間に生きた。引かれた線から身体性を伴ったリニアな時間は読みとれず、どこか所在のなさを湛えている。

この手
遅く描くことは身体に相当な負荷を与える。同じ姿勢を保つのだって疲れるし、五分でも、十分でも、描かれつつある図像や文字を見ていたらゲシュタルトは崩壊する。筆をもつ手だっていま何を描いているのか忘れてしまう。描きながらにして、いま、その瞬間筆を動かす画家の主体性はバラバラになり散逸するが、すでに画面に引かれている線や描かれた形が画家を新しく形作る。つまりその極めて遅い運筆の間に、画家は以前の画家ではなくなっている。運筆に負荷をかけることで初めてそれは起こるわけで、身体性に任せて気持ちよく線を引っぱっているだけでは古径のような線は引けない。令和のいま、その時間を生きている人はそうそういないだろうし、というより古径が生きた時代にだって自分の名前を数分かけて書く人なんていなかったはずで、だからこそ逸話として残されている。だからすごい、とまずは言える。
古径は理想とする飛鳥天平時代の線を指して「ぬきさしならぬ線」と表現したが、自身の画家としての主体性を遅く描くことによって解体し、線の側に主導権を渡すことで、時空間を貫く無時間的な線を引くことを試みた。
そうか、この手があったか!

仮張り
紙のシワを伸ばしたり、紙にテンションをかけて絵を描きやすい状態にするために、接着力の弱い糊で一時的に紙を張り込むことを「仮張り」という。「仮」であるということは、いずれ別の状態に移行することが予感されている。絵が完成したら仮張りから剥がし、パネルに張り込んだり、表装するなどして画面を安定した状態にしておくのだが、仮張りの、あるいは仮張りから剥がしたままのペラの「まくり」には別の接続可能性が、のりしろのように紙片(絵画)を囲んでいる。
絵画が手を差し出すので、こちらもその手を握ってみる。握手をするとき、そのひとときの手と手の触れあいには、すぐに離されることが含まれている。

「絵画の手と手」近藤恵介

 

近藤恵介インタビュー


 

作家CV

近藤恵介 Keisuke KONDO 
1981年福岡県生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業。画家。

近年の主な個展に、連続展形式の「卓上の絵画」(MA2 Galleryなど、東京、2017-2020年)、「12ヶ月のための絵画」(MA2 Gallery、東京、2013-2014年)。主な2人展に、「、譚 近藤恵介・古川日出男」(LOKO Gallery、東京、2019年)、「ダンダンダン。タンタンタン。」(LOKO Gallery、東京、2016年)、「あっけない絵画、明快な彫刻 近藤恵介・冨井大裕<再展示>」(川崎市市民ミュージアム、神奈川、2013年)。主なグループ展に、「所在―游芸」(kenakian、佐賀、2021年)、「VOCA展 2019」(上野の森美術館、東京、2019年)、「絵画の現在」(府中市美術館、東京、2018年)、「引込線2017」(旧所沢市第2学校給食センター、埼玉、2017年)。作品集に、『12ヶ月のための絵画』(HeHe、2014年)。主な論文に、「卓上の絵画、線の振幅」(佐賀大学芸術地域デザイン学部研究論文集 第4号、2021年)。2020年より、文学ムック『ことばと』(書肆侃侃房)の装画・挿絵を担当。