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森夕香「明ける」

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こんなに明るい場所に来たことはなかった気がする
淡く重たい光の中に身体は遊ぶ
そして能動的に隠れはじめる
バラバラのそれらは 各々に隠れ場所を見つけ 息を潜めて呼吸を始める

 

画家・森夕香による初の個展「明ける / Dawning」を開催いたします。

「身体」、そしてそれを取り巻くさまざまな事物との「境界線」をテーマとして制作を続けている森ですが、本展では“朝”を主題にすえた作品群を発表いたします。

森が描くのは、時間や存在の輪郭・境目が曖昧になる「あわい(間)」の時としての朝です。早朝、闇が明けていく美しい瞬間に、彼女は自分の身体が風景、あるいは世界の中に溶け込んでいくような感覚をおぼえるといいます。そこに存在するのは単なる爽やかな心地良さだけではありません。人間の中に潜む、清濁を超えたあらゆる感情や記憶が溶出し、“朝”と一体になり浄化されていくような気配。それによって肉体への意識や、自己と世界の境界線が消失するような感覚を、 森は自らの理想として描いています。

また今回の作品群では素材や描法に関しても新しい選択が重ねられています。日本画を出自とする森ですが、新作群では日本画的な工芸性を一旦排除し、画家の痕跡をストレートに感じさせる即興的な筆触や、塗り重ねられた絵肌を残すことを試みました。これらの表現は以前の彼女の作品には見られなかったものです。また日本画材と油画材の併用は森が以前から試みてきたことですが、新しい作品では下地 / 定着材 / 顔料の各層で異質な材を用いるなど、その混淆の性質がより複雑かつ有機的なものに進化しています。

独自の絵画世界を軽やかに往き来する彼女の、最新の表現をお楽しみいただければ幸いです。

 

今回の作品は全て“朝”をテーマにしています。
朝の光、朝の湿度、朝の気温、朝の匂い、朝の風、朝の音。
私の中にある絶対的な”朝”に包まれた身体の感覚への憧れや想起を、
絵画の中に留めて生かしたいと思いました。
森夕香

ARTIST PROFILE: 森夕香

《牢の身体》 / 2017 / 和紙, 日本画顔料, コラージュ / 33.2 × 19 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《溶けるひと》/ 2017 / 和紙, 日本画顔料, コラージュ / 43.4 × 35.7 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《ながめるひと》/ 2017 / 和紙, 日本画顔料, コラージュ / 43.4 × 35.7 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《岩のひと》/ 2017 / 和紙, 日本画顔料, コラージュ / 43.4 × 35.7 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《フロのひと》/ 2017 / 和紙, 日本画顔料, コラージュ / 53.1 × 44.1 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《やまのひと》/ 2017 / 和紙, 日本画顔料, コラージュ / 53.1 × 44.1 cm /Photo:Masaru Yanagiba
《科学が封じた妖怪》/ 2017 / キャンバス, 油彩, 日本画顔料, 胡粉 / 33.3 × 24.2 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《ゆめ》/ 2017 / キャンバス, 油彩, 日本画顔料, 胡粉 / 33.3 × 24.2 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《ペトリコール神殿》/ 2017 / キャンバス, 油彩, 日本画顔料, 胡粉 / 117 × 91.2 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《すべてのよそと結びつく》/ 2017 / キャンバス, 油彩, 日本画顔料, 胡粉 / 162 × 130 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《早朝のインサイドアウト》/ 2017 / キャンバス, 油彩, 日本画顔料, 胡粉 / 162 × 130 cm / Photo:Masaru Yanagiba
《醒め溢れる》/ 2017 / キャンバス, 油彩, 日本画顔料, 胡粉 / 162 × 130 cm / Photo:Masaru Yanagiba