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石川直也「自立しない人 – 繋がりと作法 – 」

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[EVENT]6/8(土)開催
◯ 15時〜トークイベント
登壇者
石川直也(アーティスト)
対談ゲスト:水沢 勉(美術史家・美術評論家)
モデレーター:山越紀子(インディペンデント・キュレーター)
◯ 17時〜レセプションパーティー

 

立つ 立てる 立たない 立てられない

石川直也のいま

水沢 勉

 

石川直也。基本、石の彫刻に(いそし)んでいる。

どんな石も、隕石という例外をのぞいて、ほぼ地中から生まれる。その点、多くの金属やセメントや化石燃料とも縁がある。アメリカのネイティヴ・インディアンであるホピ族の教えでは、ひとはそれらを使ったらもとの場所に埋め戻さなければならない。そうしないと地球全体は痩せていく。

石川直也の作品は、いつでも不安定で、それをしっかり支えるための土台(彫刻の場合には、「台座」や「地山」と呼ばれる基礎や接続部)とは切り離されている。

中途半端に浮いた状態。つまり、彷徨(さまよ)える彫刻、なのである。

それは重みという属性を相対化させるということであり、その「浮き」に対して、特別に敏感な資質と呼応する才能であり、彫刻はけして固定されない。

 

浮遊し、流動する・・・「パンタ・レイ(すべては流れる)」

 

ギリシャの哲学者タレスの万物流転の洞察とも、遠く時空を越えて呼応している。

反重力、無重力という人工の幻想は拒み、いつも明確に意識して、あいまいな状態で(たたず)む。あるいは、(もた)れる。ときに逆立(さかだ)ちする。また、()られる。

石の重さ。大地とのつながりゆえに、そのバランス次第で、立つ、立てる、立たない、立てられない・・・そのようなあいまいな覚束(おぼつか)ない、ぐらつき状態の彫刻が、その結果、生まれることになる。

当然、色彩という変化に富んだ知覚現象とも、予想不可能な他人の表現とも相性がよい。コラボにも自在に適応できるのだ。

 

彫刻の基点はどこにあるのか?

 

そのような問いを、わたしたちは、いま石川直也の作品を前にしたときに気づくと、知らず知らずに発しているのだ。しかも、なんとも自然に心地よく。

 

   (みずさわ つとむ 美術史家・美術評論家)

 


 

LOKO GALLERY ではこの度、弊廊では初となる彫刻家・石川直也による個展「自立しない人 – 繋がりと作法 – 」を開催致します。

石川は1987年東京生まれ。2012年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻を修了し、現在は神奈川県にて活動を続けています。

彫刻思考による平面作品やライン彩色を施した抽象彫刻など、人間の認識や知覚に問いかけながら、彫刻と絵画といった境界を模索してきた石川は、長い歴史を持つ大理石という素材との対峙を通して「彫刻とは何か」という問いに向き合ってきました。

本展で紹介する、ひとりでは立つことの出来ない人体彫刻「自立しない人」シリーズのはじまりは、石川が数年前に自身のアトリエを作った時間にさかのぼります。傾斜地に位置したその土地は当初、制作はおろか人間が立つことすらままならない場所でした。彼はそこで初めて<土留め>という作業が必要であることを知ります。家族や周辺の人々の助けをかりながら木を切り平らな地面を作る中で、石川はこれまで自身が誰かによって既に平坦にならされた世界で生きてきたことに気付いたといいます。それはすなわち人間がいかに他に依存して生き、繋がりの中で初めて立つことが出来ているのかという命題との出会いでもあり、その気付きは石川が「初めて自然と思えた彫刻」だと話す、以降の「自立しない人」作品の誕生へと接続されてゆきます。

何を彫刻とみなすべきかという批判的な問いを超えてきた現代彫刻の歴史は、台座という依存先との歴史でもあります。木の生い茂るアトリエで、自然な人体彫刻とは何かを模索した制作時間を通して、石川は台座の無い彫刻が様々な環境の中でいかに自立しうるか、或いは果たして自立する必要があるのかという問いに注目するようになります。物理的な繋がりや関係性(重力、摩擦力、張力)にも依拠しながら、彼は彫刻が立つための作法を探求してゆきます。それは先の人間と自立に関する問い同様に、おかれた環境に依存し繋がりながら、そのバランスの中で彫刻はいかに存在しうるのかということへの思考と行為でもあります。石川がひとつの参照点として挙げる小児科医・熊谷晋一郎氏による言葉「自立とは依存先を増やすこと」が示唆する豊かさを、彼は自身やその作品に重ね合わせながら「自立しない人」シリーズを継続しています。

作品はまた、様々な石との偶然の出会いの中から生み出されています。粘土や石膏の原型などを介さずに直接素材の塊に彫りを入れてゆく直彫に、石川は美的な誠実さを見ています。
彼が「石の作法」と呼ぶそれは、石を動かし、割り、彫るという一連の出来事が内包する美しさなのかもしれません。石を割る際に生じる丸い形状や素材個体の持つ筋模様などが残された作品は、ある種の偶然性をも丸ごと容認しながら自然の形の不規則さや不定さを包み込んでいるようです。そこに人間の形象の痕跡を見出す石川の彫刻は「繋がりと作法」の実践を通して、観る者にどのような経験と可能性を提示してくれるでしょうか?

本展は1階から吹き抜けを経て2階へと続くギャラリー空間において、展覧会タイトルと同名の4つの彫刻作品を中心に展開されます。どうぞご期待下さい。

 


 

石川 直也  Naoya Ishikawa

彫刻家

「彫刻とは何か」という問いに対して、大理石と言う素材と向き合い、
立つことの出来ない人体彫刻「自立しない人」などの探求を続ける。
数年前林に作ったアトリエは、自分一人では平らな地面すら作れず、
彫刻が立つことは不可能な土地だった。
そこで初めて生まれた「自立しない人」は自身が初めて自然と思えた彫刻だった。
この彫刻は、自立とは様々な関係性の中にあり、自立しないことは豊かなことでも
あると教えてくれた

1987 東京生まれ  (現在神奈川県在住)
2010 東京芸術大学 美術学部彫刻科 卒業
2012 東京藝術大学大学院 美術研究科修士課程 彫刻専攻 修了
現在  彫刻家として活動、Gallery Gigi オーナー

個展
2022 LINE / RISE GALLERY(東京)
2022 自立しない人 / Gallery Pictor(神奈川)
2015 石川直也展 ー日常ー / KANEKO ART TOKYO(東京)

主なグループ展
2023 Inbetween / CREATIVE SPACE HAYASHI(神奈川)
2023 視座 Constellations of Viewpoint / 銀河101(東京)
2023 Ballet meets Art vol.2 / KATSUYA SUSUKI GALLERY(東京)
2023 dialogue 石川 直也 / 山口 ひかり / s+arts(東京)
2023 中心はどこにでもあり、多数ある - Final Group Show / Gallery Pictor&宝庵(神奈川)
2022 ART NAKANOSHIMA2022 / MA2 Gallery ブース(大阪)
2022 NAOTO KUMAGAI×NAOYA ISHIKAWA Oil on Marble / Gallery Gigi(神奈川)
2022 Progress- 石の時・布の時間- / S+arts(東京)
2021 awareness / Gallery Pictor(神奈川)
2021 Independent Tokyo2021 / 東京ポートシティ竹芝(タグボート)(東京)
2020 My Sculpture / Gallery Gigi(神奈川)
2018 壁11㎡の彫刻展 / いりや画廊(東京)
2017 STONE-表現の原石 – / FEI ART MUSEUM YOKOHAMA(神奈川)
2016 みつけること・またみつけること / 藤沢市アートスペース(神奈川)
2014 十日町石彫シンポジウム / 十日町 (新潟)

受賞
2023 神奈川県文化賞未来賞
2021 Independent Tokyo2021 審査員特別賞LEESAYAr 李 沙耶賞
2021 Independent Tokyo2021 審査員特別賞RISE GALLERY 麻生 順一賞
2021 Independent Tokyo2021 審査員特別賞s+arts 山本 知青賞
2018 大分アジア彫刻展 入選
2015 神奈川県美術展 入選
2012 東京藝術大学修了制作展 東京都知事賞
2010 東京藝術大学卒業制作展 東京都知事賞・安宅賞

Instagram
@ishikawa_naoya_sculptor

アーティストWEBサイト
naoyaishikawa.jimdo.com

 

Photo by Ujin Matsuo