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今実佐子「息吹」

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この度、今実佐子によるLOKO GALLERY では初となる個展「息吹」を2024年1月26日から2月24日までの期間で開催いたします。 

◯ オープニングレセプション 1/26[金] 17:30-19:30
<対談> 18:00 –
ゲスト:新潟市美術館 特任館長 前山 裕司
アーティスト:今 実佐子
モデレーター:上野の森美術館 学芸課主任 岡里 崇

 


 

アーティストステートメント

 

化粧品で絵を描き始めて、気付けば10年以上が経っていました。

絵は、私を映す鏡であり、私の分身です。
描く絵を全て自画像だと捉え、
その日その時の自分の心身の揺れ動きを描き写せるよう、
作品と向き合ってきました。

本展覧会「息吹」では、
新作と8年前に制作した作品を
同時に展示します。

昔の私にもう一度出会う事。
今この瞬間を生きている事。
そして、想像するこれからの事と終わりの事。

あの日あの時の私の「生の痕跡」が、
どういった変遷を辿っていったのかを
体感して頂けますと幸いです。

 

今 実佐子

今実佐子インタビュー

 


 

今実佐子

「息吹を感じて」

 

今実佐子は「VOCA展2016」にピンク色の3枚組の作品を出品した。上野公園=春=桜という連想ゲームのように、この時期この場に合わせて狙った作品と受け取られそうだが、すでに確立していた彼女のスタイルがピンクの口紅を使った絵画だった。

その後2022年にギャルリー東京ユマニテbisで久しぶりに個展を開いた。《2021.10.24》《2022.03.07》などのメインの大作には太く強い線が現れ、VOCA展出品作品の繊細な印象から大きな変貌を遂げたのには驚かされた。これらの作品はパネルの中にもう一枚パネルを入れることで、画面の中央がせり出し、立体的に見えるように作られていた。

翌2023年にも再び同じ会場で個展を開いたが、太い線は姿を消し、ピンクの口紅のキラキラした印象が目に残った。メインの大作はパネルの厚みが10cmと引き続き立体感を感じさせる作りだったが、一方で、透けて見えるトレーシングペーパーに口紅で描いた《その輪郭》シリーズを壁から離して紙のまま吊るし、その軽やかさは他のパネル貼り作品とは真逆の印象を与えた。

この展示の小品《明日には、2023.05.17》では画面に部分的に突起を作り、光の当たり方による見え方の変化を追求していたが、画業を通しての特徴の一つは、化粧品特有の質感の様々な視覚効果の追及である。二つ目は作品を「自画像」と位置づけていることである。化粧する自分を化粧品の作品に重ねるだけではない。2022年と23年の個展で作風が大きく変わったように同じピンクの口紅でも時期によって心情に変化があり、毎回描き方も変化する。「自画像」とはその時々の心情をも反映した作品である。

本稿執筆時点で今回2024年1月のLOKO GALLERYの個展はまだ先で、作品の多くも実見はしていないので、以下は作家からの情報に基づく記述となる。

《萌芽》《サンスベリア》はピンクの口紅で作った画面に線が入っている。この線は描いた線ではなく穴を開けたものだという。近年はカッターややすりで画面に表情をつけていたが、穴を開けるのは初めての試みだ。《萌芽》は直線だが、《サンスベリア》は有機的な線を用いており、後者は職場の席から見える植物「サンスベリア」から着想を得たという。

他にも勤務先の植木屋で植物を目にすることで緑色の作品が現れた。加えて以前には見られなかった白や紫色の作品も登場し、用いる色のバリエーションが増え、ほとんどピンクで統一されていた作品世界から新たな一歩踏み出し、作品の領域を拡張し始めているようだ。

今回は「VOCA展2016」出品作品が1F正面のメインの壁を飾り、2022-2023年の近作も並び、オフィスでは2012年の初期作品も見せるという。これまでは新作と旧作を並べて見せることには抵抗があったそうだが、今回はそれらを同時に見せる。時代ごとの今実佐子の「息吹」を感じることのできる稀有な機会となるだろう。

上野の森美術館 学芸課主任 岡里崇

 

 


 

今実佐子 Misako Kon

 

1991年 東京都生まれ
2010年 女子美術大学付属高等学校 卒業
2010年 筑波大学 芸術専門学群 総合造形領域 入学
2014年 筑波大学 芸術専門学群 総合造形領域 卒業
2016年 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士前期課程 修了

個展
2024「息吹」LOKO GALLERY / 代官山,東京
2023「光に向かって歩み続ける」 ギャルリー東京ユマニテbis / 京橋,東京都
2022「あなたは、私」 ギャルリー東京ユマニテbis / 京橋,東京都
2015「浮かんでは消えていく」 ギャルリー東京ユマニテbis / 京橋,東京都
2014「うつろい」 アートギャラリーT+ / つくば市,茨城県

主なグループ展
2016「筑波大学大学院 博士前期課程 修了制作展」 つくば美術館 / つくば市,茨城県
2016「ガラパゴス・ファイン6」 たけだ美術 / 銀座,東京都
2016「VOCA展2016 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」 上野の森美術館 / 上野,東京都
2016「福島現代美術ビエンナーレ2016」 大山忠作美術館 / 二本松市,福島県
2015「SICF15」 スパイラルホール / 青山,東京都
2015「新鋭作家展」 川口市立アートギャラリー・アトリア / 川口市,埼玉県
2015「31,536,000分の1の・いま part1」 Gallery K / 京橋,東京都
2015「ハナノイアナクロニー」 清酒「花の井」醸造元㈱西岡本店 / 桜川市,茨城県
2014「筑波大学芸術専門学群 卒業制作展」 つくば美術館 / つくば市,茨城県

受賞・入選
2016「筑波大学大学院 博士前期課程 修了制作展」芸術賞(最高賞)
2015「新鋭作家展」入選

収蔵
筑波大学

アーティストWEBサイト
konmisako.com

Instagram
@kon_misako_official

 

 

メインビジュアル 撮影:大河内禎

今実佐子《サンスベリア 2023.10.31 / Sansevieria 2023.10.31》2023, 化粧品 紙 パネル, 72.7×60.6×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《萌芽 2023.11.04 / Sprout 2023.11.04》2023, 化粧品 紙 パネル, 41×31.8×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子(左から)《そして今日もまた眠るだけ 2015.10.12》《そして今日もまた眠るだけ 2015.10.14》《そして今日もまた眠るだけ 2015.10.17》各 2023, 化粧品 紙 パネル, 162×124×10[撮影:大河内禎]
今実佐子《境界 2023.04.16》2023, 化粧品 紙 パネル, 162×124×10 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《水の反映 2023.11.03》2023, 化粧品 紙 パネル, 100×80.3×8[撮影:大河内禎]
今実佐子《2022.03.07》2022, 化粧品 紙 パネル, 162×130.3×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《積層する今日 2023.11.09》2023, 162×124 ×10 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《雨の庭 2023.09.20》2023, 化粧品 紙 パネル, 33.3×33.3×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《春 2023.08.14》2023, 化粧品 紙 パネル, 45×45×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《心臓 2023.11.28》2023, 化粧品 紙 パネル, 15×15×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《朝陽 2023.09.20》2023, 化粧品 紙 パネル, 33.3×33.3×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《愛 2024.02.06》2024, 化粧品 紙 パネル, 45.5×38×5 cm
今実佐子《夢 2023.12.03》2023, 化粧品 紙 パネル, 20×15×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《夢 2023.11.30》2023, 化粧品 紙 パネル, 20×15×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《夢 2023.12.01》2023, 化粧品 紙 パネル, 25×25×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《夢 2023.12.02》2023, 化粧品 紙 パネル, 25×25×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《2012.03.26》2012, 化粧品 キャンバス, 45.5×38×2 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《2012.03.25》2012, 化粧品 キャンバス, 45.5×38×2 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《夢 2023.12.05》2023, 化粧品 紙 パネル, 15×15×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《夢 2023.11.15》2023, 化粧品 紙 パネル, 15×15×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《夢 2023.11.21》2023, 化粧品 紙 パネル, 15×15×5 cm[撮影:大河内禎]
今実佐子《夢 2023.12.10》2023, 化粧品 紙 パネル, 15×15×5 cm[撮影:大河内禎]