EXHIBITIONS
幸田千依「絵に成る暮らしとあの光」
- Information
- Works
- DATE
- 2024-04-19 [Fri] - 2024-05-18 [Sat]
- OPEN TIME
- 11:00-18:00[Tue-Sat]
- CLOSE DAY
- Sun, Mon, National holidays[※ 5/3(金/祝)・5/4(土/祝)は営業]
◯ オープニングレセプション:4/19(金)17:30 – 19:30
◯ ゴールデンウィーク企画「絵の前で昼飲み会!」:5/4(土)15:00 – 18:00[誰でもゆるっと参加費100円 /「色彩からの伝言」前で待ってます]
「絵に成る暮らしとあの光」
「絵に成る暮らし」という言葉を思いついたのは、2016年に熊本の津奈木町で滞在制作をしていたときのことだった。
私の中で暮らし方(生き方)こそが絵を見出していくという自然な実感から出た言葉だ。
その時から現在に至るまで、絵に成る暮らしはどこにいても続いている。
2019年に息子を出産した後しばらくの間、私はこれまで感じたことのない感覚に毎晩涙を流していた。その感覚を言葉で表すことはとても難しかったが、どうにかして記憶しておかなければすぐにでも忘れてしまうような気がしていた。
イメージでなら記憶しておくことができるかもしれない。そう思った私は、その漠然とした感覚を言葉ではなく一枚の絵に残そうと思った。恐る恐る、感覚になるべく近くなるよう描いたそのイメージは、ほとんど白黒の色彩の中に白く光る光源があり、その光を宇宙船の暗い窓から見ているような絵に成った。その光が何なのかはわからないが、とにかくハッと気がついた時にはもう私はそこから切り離されていて、窓越しに見るその光の中に戻ることはできない、ということが悲しかった。上手く表せたかはわからなかったけれど、そのイメージはずっと頭の片隅にあり続けていた。
時は流れ、私は今息子と絵に成る暮らしの中にいる。
産後に畑を始めてから、全てが連なって影響し合うことに感動し、息子が何も教えなくともタネのようにプログラムされた速度と方法で生きているのに感動し、新しい生の視野がひらかれた。
巡りくる季節に合わせて自分の心と体も入れ替わっていくことを実感して、流れ続ける今と、そこに含まれる次の予感に勇気を得て暮らしている。
その反復の営みの中、どうしても留め伝えたいとふいに手を伸ばし掴んでしまうものがいくつかの絵に成った。
毎日見る家の窓。
息子といく畑。
母の家で午睡から目覚めて、隣に息子が寝ているのを見たときの不思議な感覚。
LOKO GALLERYの一角を間借りして公開制作をした時、人が同じ空間の中に居合わせるだけで起こる様々な相互作用の煌めき。
それらここ最近の暮らしの中から出てきた絵とは別に、息子が生まれる前から描き進めては何度も中断し、出産を経て構図やモチーフがガラッと変わりながらも、何か一つのイメージを追って描き続けてきた絵がある。
初めは夜の街の光の絵だったのだが、産後新たに描き直す時、黄昏時の畑の光の絵に変わった。
そしてそれは、あの光だった。遠ざかってしまってもう触れることのできないと思っていたあの光を、畑にいるときに見つけたのだ。絵を描く行為の中でそのことに気がつき、絵に成る暮らしの一枚一枚の絵の中にも、いつもあの光があったとわかった。それは風景の形を借りた、あの光の反射光だ。色彩からの伝言だ。
そして今、一番近くにいる息子の姿にもまた、あの光の温度を感じている。
幸田千依
ARTIST PROFILE: 幸田千依