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築山有城「ラウンダバウト」

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彫刻家 築山有城は4カ国から14名のアーティストやリサーチャーが参加したレジデンスプログラム See Saw Seeds の一員として 2016年の3ヶ月間、アラブ首長国連邦のドバイに滞在しました。本展はその成果として現地で制作発表された大型のコラージュ作品の日本における初公開となります。

本展のタイトルであるラウンダバウトとは欧州や中東でよく見られる信号のない環状の交差点を指します。築山は4メートル超の支持体に、現地の新聞や雑誌から切り取ったアラビア語のテキストで巨大なラウンダバウトのイメージを描き出しました。車が流れ込みそして出て行くラウンダバウトは中東地域のハブとして繁栄するドバイの街やその活発な交流の様子と重なりますが、作品イメージを構成する数千枚の紙片に記されたテキストはアラビア語を解さない者にとっては意味を成さず、情報を読み取ることはできません。それは、相互理解を伴わないグローバリゼーションの急激な進行が民族や宗教間の深刻な対立を生む世界の現状を我々に想像させますが、同時に、地道な手仕事によって積み重ねられた圧倒的な大画面、明るい色調からは、ディスコミュニケーションが我々にもたらす絶望感を打ち消すかのようなポジティブなエネルギーをも感じることができます。ドバイで慣れないアラビア語に囲まれ、ラウンダバウトで立ち往生した経験は、異文化、異なるルールの中に存在するということを築山に強く意識させました。ハサミなどの道具を使わずに、自らの手指のみで作品に対峙することは彼がドバイで感じた疎外感や無力感を克服するために必要な、祈りにも似た行為であったのかもしれません。

1976年に生まれた築山は京都造形芸術大学で彫刻を学んだのち、出身地である神戸を拠点に活動してきました。彼が扱う素材は、金属や樹脂、木材、塗料など多岐に渡りますが、制作の出発点は常に素材そのものにあります。彼自身が「遊び」と呼ぶ実験を繰り返すことで見出される素材の特性を作品主題の一部とするその手法は、膨大な量の手仕事とともに築山の制作活動を特徴づけています。また、近年では、展示空間そのものを素材として捉え、物質的な素材と相乗させるインスタレーションも手掛け、その表現の幅を広げています。

協力:TEZUKAYAMA GALLERY、C.A.P. 芸術と計画会議、See Saw Seeds、Tashkeel、Dubai

[オープニングレセプション]
2月17日(金)18:00 –