ヴォルデマース・ヨハンソンズ 個展
Uncertainty Drive / 不安定装置

2017 年 10 月 25 日(水)- 11 月 18 日(土)

[火 – 土]  11:00 ‒ 19:00
[日・月・祝] 休廊

[オープニングレセプション]
10月25日(水)18:00-

[アーティストトーク]
10月27日(金)19:00 –
会場:駐日ラトビア共和国大使館
150-0047 東京都渋谷区神山町37-11
03-3467-6888
http://www.mfa.gov.lv/jp/

協力/助成:駐日ラトビア共和国大使館

ヴォルデマース・ヨハンソンズ(Voldemārs Johansons)は、ラトビア,リガをベースに活動する作曲家であり、現代美術作家です。
音や光、映像などの様々なメディアを用いた、まるで実験装置のようなインスタレーション作品は、科学的なリサーチに基づき精密に設計され、人間の知覚と環境との関わりについての考察が込められています。
たとえば、リガ大聖堂で発表された“Op.39 (standingwaves)”は、聖堂の中庭にパイプオルガンを模した鋼管が彫刻のように立ち並ぶ中、空気の流れによって生み出される様々な低音が、周辺の温度や風、鑑賞者の立ち位置などの影響を取り込みながら変容します。
また、2015年の“Thirst”は、北海の岩場から超高画質撮影した波濤の映像をパノラマスクリーンとサウンドシステム、スモークマシンを使って上映する作品で、鑑賞者は打ち寄せる波と嵐の轟音、圧倒的な自然の姿をまるでその場にいるかのように体感することができます。

日本では初の発表となる本展でヨハンソンズが選んだテーマは「不安定性」です。
散逸構造論で知られる物理学者イリヤ・プリゴジンは「不安定さと創造性は私たちの世界に内在している」という言葉を残しました。
それは、自然界の法則の、“予測不可能であるがランダムではない”という性質が、アートやデザインの実践、そして人間の創造性や想像力に大きな影響を与えるということを示唆しています。
本展で発表される新作のサウンドインスタレーション「Uncertainty Drive(不安定装置)」には、微量の放射性物質を含んだサンプルが使用されています。
放射性物質は、その不安定な原子核が崩壊を起こす瞬間に放射線を放出します。放射性崩壊の確率上の頻度は物質により決まっていますがそれがいつ起こるのかは予想できません。本作では、予測できないタイミングで放出される放射線をガイガー=ミュラー菅が感知し、そのデータをもとに「楽器」がその場で音を作り出します。放射線による展示空間の目に見えない環境の変化はアートワークを通じて可聴化されます。

放射線は人間の五感では感知することができません。しかしそれは様々なかたちで自然環境にあまねく存在し、エネルギーや医療、バイオテクノロジー等の分野で人間の営為にも深く関わっています。また、核兵器や原子力発電の存在については現在も多くの議論がなされており、未だ解決の道筋さえ見えない大きな課題として我々の前に横たわっています。

ヨハンソンズの作品は、知覚できないものを捉えるための想像力を喚起するとともに、環境と人間を繋ぐインターフェイスのように機能します。
そして、私たちの置かれた情況が、物理的にも、社会的にも多様な不確定要素によって複雑に成り立っているということを再認識させるのです。

 

 

ヴォルデマース・ヨハンソンズ / Voldemārs Johansons

1980 年ラトビア , リガ生まれ。 オランダ , デン・ハーグの Royal Conservatoire, Instutute of Sonology にて電子音楽を学ぶ。卒業後は音響や視覚、空間 領域の接続について研究を深め、芸術と科学技術の融合を目指した数々のプロジェクトを手がける。現代美術作家として 世界各地で作品を発表する傍ら、作曲家や研究者としても活 動する。 ヨハンソンズの作品はこれまで、ヴェネツィア建築ビエンナーレ、アルスエレクトロニカセンター、BOZAR(ベルギー)、 ルールトリエンナーレ(ドイツ)、STEIM(オランダ)、 LISTE ART FAIR(スイス)、ラトビア国立オペラ、コーチビエンナーレ ( インド ) などで発表されている。

10月 06日[藤堂 個展]展覧会情報を公開

11月24日(金)から開催する展覧会「藤堂「バウ / バウ」」の情報を公開いたしました。

藤堂「バウ / バウ」

2017年11月24日(金)‒ 12月23日(土・祝)

[オープニングレセプション]
11月24日(金)18:00 ‒

[火 ‒ 土] 11:00 ‒ 19:00
[日・月] 休廊

彫刻家・藤堂による個展「バウ / バウ」を開催いたします。

「関東大震災で倒壊した建物のレンガ」や「ベルリンの壁」といった特殊な来歴を持つ瓦礫や鉱物、古書などと積層ガラスを組み合わせた諸作で知られている藤堂ですが、日常的に描き継いでいる大量のドローイングや、木箱を “小さな空間” と捉え無数に組み上げたインスタレーションなど、その作品のヴァリエーションは多岐にわたります。 素材固有の質感・アイデンティティが直截に活かされながらも、職人的な手業による異化を経て研ぎ澄まされた作品は、国内外で注目を集めています。

多様な藤堂作品に通底する要素の一つが「素材」や「空間」に対する関心です。ここにも様々な側面があります。

たとえば彼の作品における積層ガラスは、鉱物が秘める時間性や、かつて建築物の一部だった瓦礫の歴史性のなかへ私たちが潜り込んでいくための触媒のようなものとして捉えられることが少なくありません。ガラスを積層させ磨き上げていく作業は、それぞれのマテリアルが有する物語を覗き込む、もしくは剥き出しにすることにも似ていると藤堂は語ります。

一方、藤堂が彫刻家として目論んでいることの一つに「彫刻の存在によって、周囲の空間の質を変える」ことがあります。そして物体の中にガラスを出現させることは、彼にとって “ものの中の空間を見せる” ことをも意味します。作品そのものの中に空間を存在させる、さらにその作品の素材はかつて別の空間を構成していた建築物の一部である、 といった重層的な作品構造は、素材や空間、また建築に関するさまざまな視点を象徴的に炙り出しているかのようです。

本展のタイトル「バウ / バウ」は、ドイツ語で「解体」や「撤去」を意味する “Abbau” 、「建造」や「構造」の意味を持つ “Aufbau” という2つの単語を示しています。今回の展覧会は、建築工事用の足場を用いて空間を再構成するインスタレーションを軸に展開。ギャラリー空間に対するダイナミックな建築的アプローチとともに、彼の創造の源でもある、「素材」や「空間」を取り巻く刺激的な世界に迫ります。

ユーソ・ノロンコスキー 個展
This Place is Nowhere

2017年9月8日(金)–  10月7日(土)
[オープニングレセプション]
9月8日(金)18:00 ‒
[アーティストトーク]
9月8日(金)19:00 ‒
[火 ‒ 土] 11:00 ‒ 19:00
[日・月・祝] 休廊

協力:
Gallery Taik Persons
助成:
フィンランドセンター
FRAME contemporary art finland
Arts Promotion Center Finland

This place is Nowhere はフィンランドのアーティスト ユーソ・ノロンコスキー (Juuso Noronkoski) による現在進行中のプロジェクトの一部であり、写真、ビデオ、オブジェクト、テキストベースの作品で構成されています。ノロンコスキーは、 このプロジェクトを通じて、写真イメージと現実世界における知覚との違いについて、また、イメージやオブジェクト、テキストといった、時間的、物理的に異なる表現方法が共通の空間でいかに作用するかについて考察しています。
作家自身によって撮影された、あるいは選び取られた写真は、さまざまなかたちで物理的に、そして概念的に手を加えられます。意思を伴ったイメージへの介入は、被写体が持つ意味を解体し再構築すると同時に、平面と立体、現実と想像、観ることと観られることを隔てる境界を曖昧にします。
インスタレーションを構成するテキスト、詩的な短編小説は彼の創造における思考のプロセスを伝えますが、同時に提示される視覚イメージが示す意味が文字情報によって補完されるのか、あるいはどのように変化するのかは、観るものに委ねられています。それはまるで、イメージと言葉にかかわる人間の “共感” についての実験のようでもあります。
ノロンコスキーの作品が扱うモチーフは一見すると非常に具体的です。しかしそれらは特定の文化や地域を超えた普遍性を兼ね備えています。我々がそれぞれに持つ現象や事物に対する概念をイメージの形にし、さらに重層的に介入することで、写真が 別の場所へ通じる窓としてだけではなく、鑑賞者自身、そして “観る” という行為そのものを映す鏡にもなり得ることを示しているのです。
本展は、作家にとって日本での初の発表となります。現実と虚像の境界とはどこにあるのか。そしてそこにはどのようなイメージが存在するのか。ノロンコスキーは、イメージが絶えず変化し、知覚が移り変わる “どこでもない場所” をギャラリーに現出させ、我々に問いかけます。

森夕香 個展 「明ける / Dawning」

2017年7月28日(金) – 8月26日(土)

[オープニングレセプション]
7月28日(金)19:00 ‒

[火 ‒ 土]11:00 ‒ 19:00
[日・月・祝]休廊

こんなに明るい場所に来たことはなかった気がする
淡く重たい光の中に身体は遊ぶ
そして能動的に隠れはじめる
バラバラのそれらは 各々に隠れ場所を見つけ 息を潜めて呼吸を始める

*

画家・森夕香による初の個展「明ける / Dawning」を開催いたします。

「身体」、そしてそれを取り巻くさまざまな事物との「境界線」をテーマとして制作を続けている森ですが、本展では“朝”を主題にすえた作品群を発表いたします。

森が描くのは、時間や存在の輪郭・境目が曖昧になる「あわい(間)」の時としての朝です。早朝、闇が明けていく美しい瞬間に、彼女は自分の身体が風景、ある いは世界の中に溶け込んでいくような感覚をおぼえるといいます。そこに存在するのは単なる爽やかな心地良さだけではありません。人間の中に潜む、清濁を 超えたあらゆる感情や記憶が溶出し、“朝”と一体になり浄化されていくような気配。それによって肉体への意識や、自己と世界の境界線が消失するような感覚を、 森は自らの理想として描いています。

また今回の作品群では素材や描法に関しても新しい選択が重ねられています。日本画を出自とする森ですが、新作群では日本画的な工芸性を一旦排除し、画 家の痕跡をストレートに感じさせる即興的な筆触や、塗り重ねられた絵肌を残すことを試みました。これらの表現は以前の彼女の作品には見られなかったもの です。また日本画材と油画材の併用は森が以前から試みてきたことですが、新しい作品では下地 / 定着材 / 顔料の各層で異質な材を用いるなど、その混淆の 性質がより複雑かつ有機的なものに進化しています。

独自の絵画世界を軽やかに往き来する彼女の、最新の表現をお楽しみいただければ幸いです。

*

今回の作品は全て“朝”をテーマにしています。
朝の光、朝の湿度、朝の気温、朝の匂い、朝の風、朝の音。
私の中にある絶対的な”朝”に包まれた身体の感覚への憧れや想起を、絵画の中に留めて生かしたいと思いました。

森夕香

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New Artist in Residence Program for Israeli Artist

TOKYO – JAPAN

We are pleased to announce that the following artist will carry out his project within the Artist in Residence Program for Israeli Artist in 2018

 

Eyal Segal

http://www.eyalsegal.com/

 

His exhibition will be held from 17th Feb. to 17th Mar. 2018 as a part of the partnership program of

The Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2018

https://www.yebizo.com/jp/

 

Details to be announced.

 

 

The Program
For the first time the newly opened contemporary commercial gallery will cooperate with the Israeli Embassy in Tokyo and invite a single Israeli video artist for a unique residency program to be held in one of the most interesting neighborhoods of Tokyo.

The aim is to enable a new creation of a video instillation by an Israeli artist in the heart of this dazzling city and introduce a new voice to interact with the local art scene.

We wish to host an interesting, thought-provoking artist with the most intriguing and unique project.
Program summary
a) Creation of a new work: participant will begin a new work while in Japan or continue the work on an existing work and present the finished work at the end of the stay at LOKO Gallery.
b) Open Studio: participant will present the progress of his/her work being created as part of the program
c) Taking part in “Gallery Talk” and other Gallery event.
LOKO GALLERY
This contemporary art gallery opened in July 2016 in Daikanyama, Tokyo. It has a unique space with 2 floors and also offers artist residency facilities. “LOKO” means “place” in Esperanto. The gallery endeavors to create a place for the cultivation of emerging artists and to promote open communications among all people in the art community.

http://lokogallery.com/en/

Daikanyama
small, creative and hip district within Shibuya ward of the central Tokyo.
Between the Daikanyama station (Tokyu Toyoko line) and the JR Yamanote line tracks are numerous tiny cafes, art spaces, , clothing stores & boutiques that give Daikanyama its very special vibe.

http://www.gotokyo.org/en/tourists/areas/areamap/daikanyama.html

The program
4 weeks in total spent in Tokyo, Japan
3 weeks – working
4 weeks – exhibition
1 Artist

Diagram

Diagram

 

Schedule
Application period:
June 14th, 2017 to August 14th, 2017
Selection period: Latter half of August, 2017 to the end of September, 2017
*Applicants may be required remote Skype interview by selection committee in English.
Residency period: 4 weeks Feburary 2018 (3 weeks for working)
Exhibition: 4 weeks February – March 2018 (Artist will be present for the first week)
Result of the selection would be announced early October, 2017

Application Guideline
Focus Area
Visual Arts – Photography/Media Arts, Video Art
Conditions
Israeli Artists (Israeli passport holder)
English language skills sufficient for daily conversation
Motivated to exchange with the local community through workshops and lectures
Artists who have had a least one solo show in leading gallery and participated in a minimum of 5 group exhibitions.
Be in good health.
Have access to the equipment necessary to participate in a remote interview (i.e. a computer capable of connecting to the internet and using Skype).
The works in the exhibition would be on sale. The condition of the sales would be discussed between the applicant and the gallery at the final stage of the selection.

Provisions

  • Traveling expense: Available (up to ¥100,000)
  •  Production fee: Available (up to ¥70,000)
  •  Accommodation: Available
  •  Professional and staff support: Available
  •  Exhibition: Available at LOKO gallery

 

 

Equipment

  • High-end Powerful Projector (EPSON EB-L1500U) and sound system available

PDF spec sheet

  • 40 inch LED monitor (Hisense HS40K225) x 3 available

PDF spec sheet

  • Blu-ray/DVD players available

*Filming, Recording and Editing devices for the production must be prepared by the artist.

application form
*Please fill out application form.
Additional images, links to videos and other materials regarding the artist or the proposal can be sent via e-mail.

Contact/Inquiry
tokyolokoair@gmail.com

This project is hosted by LOKO GALLERY with the support of the Embassy of Israel in Japan.

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エクササイズ & Grandscape
石原康佑・福濱美志保

2017年5月19日(金) ‒ 6月17日(土)

[オープニングレセプション]
5月19日(金)19:00 ‒

[火 ‒ 土] 11:00 ‒ 19:00
[日・月] 休廊

石原康佑と福濱美志保、2人の若手ペインターによる展覧会を開催いたします。

自身にとっての決定的なモティーフを求め、試行錯誤を重ねてきた石原は、衣装を纏った人物が躍動する大画面の作品に手応えをつかみ、近年繰り返し制作してきました。今回の彼のメイン作品である《エクササイズ》シリーズは、その最新版です。大きく変形した人体のフォルムや、絵肌の質感・色彩に宿る感覚は、彼が紆余曲折を経て辿り着いたオリジナリティへの入口にも見えます。歪められた肉体の形態や動き、なぜか常に鉛筆で薄く描かれる顔面、そしてアクリル絵具を何十層も塗り重ねることによって生み出されるマティエールといった、絵画の諸要素に対するフェティッシュな嗜好性。それらの融合によって生成される作品は私たちの想像力を絶妙な角度から刺激し、ユーモラスでありながら安易な解釈を許しません。

一方の福濱は、自身で組んだミニチュア構造物を大画面の油画に引き延ばす《Grandscape》シリーズを軸に制作を続けている画家です。福濱が描く風景は、一見すると日常と乖離した別世界のようでありつつ、どこか郷愁を誘う懐かしさにも満ちています。複層的な油彩技法によって表現された繊細かつ多彩な光のグラデーションは、幻想的でいて確かな実在感を伴った世界の姿を照らし出します。あるいはミニチュアを構成する身近なパーツが本来と懸け離れたスケールに拡大され画面へ落とし込まれていることもまた、特殊な既視感や違和感を呼び起こすでしょう。“どこかで見たことのあるような、でも知らない景色が目の前に立ち上がる”こと、そして絵画の中にしか存在しえない世界を生み出すことを追求していきたいと、福濱は語っています。

石原と福濱の絵画表現は、親しみやすさとともに、ひとところに留まらず、鑑賞者の多様な捉え方を誘う謎と余白を備えている点で共通しているかもしれません。自らの世界の入口に立った2人の、清新な表現をお楽しみください。

石黒昭 “大理石絵画 / Painting of Marble”

2017年4月7日(金) – 5月6日(土)
[オープニングレセプション] 4月7日(金)18:00 –
[火 – 土] 11:00 – 19:00
[日・月・および4月29日(土)] 休廊
[入場] 無料
協力:nca | nichido contemporary art

石黒昭はこれまで、19世紀のアカデミズム絵画の登場人物を2次元のキャラクターに置き換えた“A Steganographic Romance”や、大理石の表層を絵画とし て極めてリアルに再現する“GRAVITATIONAL FIELD”などのシリーズを通して、“本物とまがい物”、“虚と実”について考察してきました。これらのシリーズで は、“本物”である既存の古典絵画や天然石に対置する“フェイク”として作品が提示されます。再現性への徹底したこだわりから見て取れる“本物”に対するリスペクトは、それが安易なパロディであることを否定し、あえて明確にされた二項対立の構図は、彼の試みが単なるサンプリングや流用とは異なる、周到に設定されたものであることを示しています。彼の“まがい物”が持つ、鋭い観察眼と技巧、膨大な手仕事に裏打ちされた強度を前に、我々鑑賞者の意識は、虚と実の間を行き来しながら、我々が持つ“本物”という概念の不確実さにあらためて気付かされることになるのです。
本展では、“GRAVITATIONAL FIELD”の未発表大型作品とともに、その発展形といえる、“Marblesque(マーブレスク)”と題されたシリーズの新作を発表します。前者が大理石の表層の精密な模倣を目指したのに対し、後者では、作家自身の中でうごめく創造への欲求やエネルギーを表現することが意図されています。物質的な外見を画面上に再現することと、作家の創造の源泉を抽象画として表現することはまさに対照的ですが、表と裏の関係にある二つの シリーズを同じ空間に展示することで、石黒が追求する“虚実のねじれの狭間”におけるぎりぎりの表現の姿が浮かび上がることになります。また、双方に共通して用いられている自然の造形美を再現する作画法は、長年にわたりFaux Finishing(大理石模造技法)の職人として活躍した作家の経験によって醸成されたものです。それは制作プロセスの核心であると同時に、 創造の思想的な土台としても機能し、虚実皮膜の追求とともに、石黒の作品世界の重要な構成要素となっています。
大理石で覆われた建造物は今日に於いても冨や権力を演出し、それらはローマ帝国時代からの繁栄の指標として伝播した姿を連想させます。そして大理石 が装飾として用いられていく過程でフェイク=Faux Finishing として描く文化がヨーロッパで普及し、19世紀に入ると新古典主義の時代に大きな復興と発展 を遂げました。私が見たそれはリアリズムやダイナミズムなど地域によってスタイルがあるものの、いずれもフェイクでありながら核心を突いた表現として見えました。そして私は大理石を絵画として意識して描くことを通して「虚の中の真実とは何か?」という考察を試みました。
天地自然の森羅万象を内包した自然の断片を遠近法のない風景画として、本物と見紛うほど精緻に描かれた「GRAVITATIONAL FIELD」は大理石のフェイクでありながらも本物の質感を探求した姿である。
また、それとは対極的に発展した表層を持つ「Marblesque」は大理石の生成過程と自身の熱量の流動を定着させることでキャンバスの上で変成をとげていく艶かしい感覚や創造のリアリティを掛け合わせた「熱による変成作用」をモチーフとした心象風景としての絵画表現にも踏み込んでいます。
大理石をずっと眺める。そこには自然の造形美があり、「自然の法則を抽出した線」を写経のように写し取りキャンバスを埋めていく過程で自分の創造性とは 無関係に意図しない変成が繰り返される。これが自分にとっての抽象表現です。
石黒 昭